Kicking away the ladder

今更ながら週毎のリーディングとはまた別に存在している必修コース全体の必読書の1つであるハジュンチャンのKicking away the ladderを読み終わりました。

邦題だと「はしごを外せ」になり、amazonとかでも売っていてなかなかの高評価です。

他にもEconomics User’s Guideや邦題で世界経済を破綻させる23の嘘とかがあり、Economics User’s Guideはこちらもコースのプレ必読書だったので結構前に読み終わりましたがとてもわかりやすく書かれていて良かったです。

ハジュンチャンはDESTINごり押しの学者の一人です。

ソウル大学卒業後、ケンブリッジでPhDを取得し、今はケンブリッジで開発経済を教えているようです。

LSEの本屋にも彼の本が一番目立つ位置で並べられています。

LSEとは関係なしに結構話題の経済学者のようです。


DESTINが彼をごり押しする理由は彼は一貫してネオリベラリズムに強く反対しているからです。

この本はそれを政策と制度という観点から主張していて、政策は主に貿易政策で制度は特許とか競争法とか銀行とか社会福祉とか色々書いてありました。

政策的な観点では、この本に沿って言うとイギリスやアメリカは自由貿易であたかも発展したように見せかけていてそれを途上国に押し付けているけど、イギリスに至っては保護主義でアメリカに至っては幼稚産業保護が激しくそのお蔭で発展したのに、自分たちが発展し終わったら途上国に対してその発展へのはしごをけり落としているという話です。

結構詳細にイギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、スエーデン、日本等々の貿易政策を描写しながらこの結論に至っており、なかなか信ぴょう性があります。

そして制度という観点では制度が定着するまでは長い時間がかかるものであって、ましてや特許や競争法等々先進国基準のものを植え付けたい場合には弁護士等々色々な人を教育する必要があって莫大なコストがかかるから良い制度は大事ではあるけど、あんまり現実的ではないというようなことが書いてあります。

その根拠は現在の先進国が発展しようとする段階の水準と現在の途上国の水準を比べると、現在の途上国の方が遥かに良い制度を持っていて、現在の先進国が今のような良い制度を取り入れるまでに軽く100年ぐらいはかかっているので、それを途上国に10年やそこらで達成しなければconditionを押し付けるというのはおかしいと言っています。

そして最後には良い政策と良い制度は一緒に行われなければ、あまり効果をなさないとしています。

それを行うために歴史分析を正しく行う重要性についても主張しています。

いずれにしても何を持って「良い」とするかに彼は疑問を抱いていて、先進国が今途上国に押し付けている「良い」政策は途上国にとっては「悪い」政策であり、1960-80年代に途上国が行ってそこそこ成功していた、かつ先進国もかつての発展段階で行ってきた「悪い」政策に断固反対ではしご外しをするのはおかしいという主張です。


他にも彼の学術論文は色々読まされていますが、一貫して言いたいことは同じで市場は政治と切り離せない、そしてstateの介入によって機能するものなんだという主張をしています。

この点では市場は擬製品で最初から存在しなかったと主張するポランニー的な考えに少し近いのかもしれません。

そしてネオリベラリズムに批判的なので、必ずしも全部の国に適したベストプラクティスな政策や制度はないんだと言っています。

この点ではダニ・ロドリックと主張が似ていると個人的には思っています。(ダニ・ロドリックもLSEは大好きです。)

その例として児童労働をあげていて、先進国において児童労働を規制するのは誰もinterventionだと思わないけど、途上国では有益な労働力を失うことからinterventionだと感じる場合が多く、何を持ってinterventionとするかどうかはその国々によって違うからそもそもネオリベラリズムにおける自由主義というもの自体を定義すること自体に無理があるとしています。

更に彼が言うネオリベラリズムは理性的な個人に重きを置いたネオクラシカルという単なるフレームワークと国家からの規制を激しく嫌ったAustrian-liberalモデルのunholy allianceだという主張をしています。

Kicking away the ladderもそうですがなかなか言葉のチョイスが面白いなと思います。

あと個人的に彼がすごいと思うのは、彼のmethodologyです。

学術論文ではなかったとしても、これだけ膨大な資料をあたって主張に相応しいevidenceを持ってこれるのは、エッセイとかを書く際にお手本にしなければいけないなと思います。(しかもqualitativeでこれだけできるのがすごい!)

個人的に彼が優秀である所以は、このmethodologyなのかなと思っています。

いつか機会があれば内容は大体想像つきますが、世界経済を破綻させる23の嘘も読んでみたいと思います。

世銀のチーフエコノミストのジャスティンリンもそうですが、同じアジアからこういった優秀な学者が出てくることは嬉しいことです。

いつかLSEでも日本人経済学者がごり押しされるような日が来れば良いなと思う今日この頃です。
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経済大陸アフリカ

最近、通学時間は時間の有効活用ということで日本語の本を読む時間にあてています。(歩くのは結構前に辞めました。笑。)

好きな本を読むと言うよりは、授業で習う内容が初めて習う内容が多くしっかり理解できているか不安なので、授業のメインではなく補填リーディングとして指定されている本の翻訳版や、自分がわからないと思っていることを補えるような本を探して読んでいます。

日本語で読むとやっぱり理解が正確かつ、スピードもかなり速く読めるし、かつ英語で一度習っていることを復習がてら読むので、新たな発見がある時もあれば何となく理解が補填された気がして安心感を得られる時間でもあります。


そんな私がスーパーお勧めしたい本が平野克己さんという方が書かれている「経済大陸アフリカ」。

これはものすごく良書で、最初必修の授業のトピックがイマイチわかっていないので何かバックグラウンドで補える本が欲しいなと探してたまたまAmazonで評価の高かったこちらの本を帰国時に購入してみました。

どこかで聞いたことのある本だなと思ったのですが、会社のおじさん達の間でこの本が刊行された時にすごく良い本で開発業界にいる人にとっては絶対読んだ方が良いから読書会をして意見交換をしようという企画があった時の本でした。

まさかその本を数年後にこうして読むことになるとは夢にも思っていなかったのですが。。。


扱われている内容も本当に幅広く、中国の対アフリカへの援助の姿勢、農業改革の必要性、欧米社会の援助への姿勢、貿易、日本の援助への姿勢、構造調整やネオリベラリズム等を含む開発の歴史、FDI、CSR、BOP、PPP等々本当によく描かれています。

そしてラテンアメリカの話がない以外はこれってほぼ私の必修の授業の内容なので、ものすごくわかりやすくサマリー化してくれているので本当に助かります。

著者の方の意見も必修の授業で言わんとしているような考えと一致しているので、LSEのDevelopment Studiesに来る人は必読書と言っても過言ではない気がします。

LSEのDevelopment Studiesに来なくても、会社のおじさん達が言うように開発に興味のある人は読んで絶対に損はない本かと思います。(経済的な話が多いので経済に興味のない人はきついかもしれませんが、読み終わる頃には人間開発的な視点で開発を見るよりやっぱり経済開発かも?と若干影響されます。笑。)

開発における理論の流れや、アフリカへの事前知識が全くないままここに来てしまい、内容的な部分でも結構苦労していたのでもっと早くからこういう活動を始めていれば良かったなと思います。


最近は日も長くなってきて、少しだけ暖かくなってきて、ハムステッドやその近くの公園、水族館等々ロンドンで行きたいけど行けてない所に足を延ばしてしまいたくなる今日この頃です。
プロフィール

疲れたむーみん

Author:疲れたむーみん
27歳からのLSE留学について綴ります。
2014-15にかけてMSc in Development Studiesに在籍します。
平和構築よりで開発学を学びたいです。
座右の銘は「努力した者が成功するとは限らない。しかし成功する者は皆努力している。」by ベートーベンです!

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